chapter 59~ chapter 59 “自殺未遂” ~ ある夜、電話がかかってきた。 「○○病院です。」 彼女が、どこかの駅でベンジンを飲んで救急車で運ばれた。 「大量に飲んでなかったので処置は終わりました。もう帰ってもいいんですが1人で帰す訳にいかないんです。 今はお宅にお世話になっているとの事なので迎えにきてくれませんか。」 “あぁ、とうとうやってしまった” と思った。 3度目の自殺未遂。 パニックになりそうになる自分を必死で落ち着かせて病院の場所を聞き「すぐに行きます」と告げた。 “どうしよう!どうしよう!!” 帰してもいいと言っていたけれど、どんな状態かわからない。 車で行った方が連れて帰るのにはいいだろう。行った事がない場所だけど地図を見れば多分行ける。 でも、私が とても運転できる状態じゃなかった。 こんなに焦っている状態で知らない道を車で走ったら事故りそうだった。 “だめだ、車は危険だ。無事に病院まで着く自信がない。” たとえ無事に着いても、不安定な彼女が隣に乗っていたら気になって運転が・・・。 電車にしよう・・・。電車だったら、どうやって行けばいいんだろう。 調べると病院のある駅は乗り変えが少なくとも2回、うちの最寄り駅から1時間半もかかる場所にあった。 とにかく行くしかない。途中の駅で休み休みしてでも、そうやって連れて帰るしかない。 そう思って玄関まで出た時、外から帰ってきたお義父さんと鉢合わせし、 夜なのに出かけようとする私に「お?今からどっか出かけるのか?」と聞いてきた。 私は「うん、ちょっと出かけてくる・・・」そう言い終らないうちにボロボロっと涙がこぼれた。 もう言ってしまうしかなかった。正直、私も誰かに言ってしまいたかった。 もう私だけで抱えるには重すぎる・・・。 事情を聞いてお義父さんは驚いたが、「車を出してやるから乗りなさい」と言ってくれた。 病院に向かう車の中でお義父さんに今までの経緯も全て話した。 お義母さんから多少伝え聞きはしていたようだが、そこまで重いものだと思ってなかったらしい。 病院に着くと「お義父さんはここに居るから、行ってあげなさい。 遅くなってもいいから、ずっとここで待ってるから連れておいで。」と言った。 彼女は病院の廊下にあるソファに頭をがっくりと下げて座っていた。 その頭をぽんぽんと叩いて「来たよ」と言うと、彼女が顔を上げた。 困ったような泣きそうな笑顔。多分、私もそんな顔をしてたと思う。 隣に座って静かに「びっくりしたよ」と言うと、 彼女はまた顔を下に向けて「迷惑かけて、ごめんなさい」と言った。 どう言えばいいのかわからなかった。心配させて!と怒った方がいいのか。 「迷惑かけてごめんなさい」なんて他人行儀な彼女に “だからなんでそんな事をいちいち気にするのよ、 そうやって人の事を気にしてる場合じゃないでしょう”と少し寂しさを覚えたけれど でも彼女の顔を見ただけでホッとして、怒りの感情は私にはなかった。 「いや、迷惑とか別にいいんだけど・・・、どーした?・・・なんかあった?」 そういう私に彼女は泣きながら「もう、笑えない・・・。」と言った。 やっぱりこの子は誰に対しても、必死で笑顔を作って生きてたんだな・・・。 「どうして無理に笑おうとするの?」と聞くと「だって笑ってないと嫌われちゃう」と言う。 「嫌わないよ。そんなんで嫌いにならないよ。あんたは私にもそうやって気を使ってるでしょう。 いつも私の喜びそうな言葉を用意して笑いたくない時も無理して笑ってるんでしょう。 そんなの見ててわかるんだから。そういうの、本心見せてくれないんだなって私はすごく寂しかったよ。 笑いたくない時には無理に笑わなくていいんだよ。 私はそんな、言いなりになるような友達が欲しい訳じゃないんだから。 そんなの友達っていわないよ。友達って意見も考えも違うから面白いんだと思うよ? だからそのままで居ればいいんだよ。なんにも人に合わせる必要なんかないんだから。 そのままの、正直な気持ちを出したあんたでいいんだから。」 私も泣きながらそんな様な事を言ったと思う。 そうして、お義父さんが病院内に様子を見に来てくれるまで2人で泣いていた。 ◆chapter 59について(日記) へ ◆chapter 60 へ ジャンル別一覧
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